24日 10:10〜11:10
「雷雲と雷放電」
      〜冬の雷、人体障害問題を含めて〜

     日本大気電気学会名誉会員 北川信一郎氏


◆話の趣旨


 雷とは一体何なのか?雲や、雨・あられと言う雷が発生する要因から始まり、さまざまな落雷と雷雲について言及する。また、その人体への影響を実例を交えて語り、雷と一体どのように付き合っていいかを説明した。


◆目次


・雷とは何か?
・雷の人体への影響
・雷から身を守るために



◆議事録


・当日の様子を伝える【議事録】はこちら です。
・講座の内容を要約したものを以下に載せてあります。










◆講座要約

◇雷とは何か?

電気に対する物体の性質としては導体と絶縁体があります。絶縁体は通常、電気を通しませんが、非常に高い電圧をかけると絶縁破壊という現象が起き、放電がおきて瞬間的に電気が流れます。

 空気は絶縁体ですが、1センチメートルあたり5000ボルト以上の電圧を加えると、パチッと火花がとびます。空気が絶縁破壊するときに音と光を出す放電がおきます。これが火花放電です。そして雷は自然がおこす超大型の火花放電なのです。

・何が雷を起こすのか?

 何が雷を起こすのかというと、雷雲がおこすのです。
雨雲でも、雲粒と雨粒の間で電気が分かれますが、空気の絶縁を破壊するほどにはなりません。
 雷雲というのは空気の絶縁破壊をおこすほど強い発電作用を持つ雲なのです。

・雷放電について

 雲の中のプラスとマイナス電気が中和する放電を雲放電といいます。雲の下部のマイナス電気が、地面にプラス電気を呼び寄せて、このプラス、マイナス電気がおこす放電が落雷です。落雷の電流は瞬間的には約3万アンペアになりますが、10万分の4秒たつと半分に減少します。雷のエネルギーは、雷の(電圧×電流×継続時間)で計算されます。およそ400キロワットアワーと推定されます。これは、家庭用の電力にすると、1軒2箇月分くらいに相当します。
プロ野球のナイターでは照明を30分継続する電力です。

 高速カメラで落雷の写真を撮ると、雲から空気の絶縁を破って火花放電が下りてくる様子が分かります。火花放電は雲から大地まで一気に進むわけではなく、30メーターくらい進むと、一瞬停止して再出発し、30メーター毎に一休みして進むので階段型放電と呼ばれます。この放電が大地に届くと大地から非常に明るい放電が、早い速度で雲に向かって上昇します。落雷の放電は、このように雲から下降し、大地に達すると同じ経路を雲に向かって上昇する往復運動となります。一つの落雷では、この往復運動は一回で終わることもあり、数回繰り返されることもあります。

・ 雷の種類

上昇気流ができる原因によって雷は分類されます。

上層の空気が冷たく、下層の空気が日射などで暖められると上昇気流が起きます。この上昇気流でつくられる雷雲を熱雷(気団雷)と呼びます。

冷たい空気と暖かい空気が接していて、冷たい空気のほうが前進すると、冷たい空気は重いので暖かい空気の下に潜り込んで行きます。暖かい空気の方が前進すると、冷たい空気の上を暖かい空気が滑り上がります。いずれにしても上昇気流がおきますから、条件の良いときには雷雲ができます。こういう雷雲を界雷(前線雷)と呼びます。

低気圧の中では上昇気流がおきますから、この上昇気流でできる雷雲を渦雷(低気圧雷)と呼びます。

 冬の雷雲は、冷たいシベリア気団が比較的暖かい日本海の上を渡ってくるときにできるので、熱雷の一種です。

・冬の雷について

 冬の雷の特徴は三つあります。一つは、雲のプラス電気を大地に放電する落雷の割合が高いことです。夏の雷は大多数が雲のマイナス電気を大地に放電します。ところが、冬には、雲の上の方に溜まるはずのプラス電気を大地に放電する落雷が、30%くらいおきます。

 夏の落雷では、最初に空気の絶縁を破壊する放電は雲から地表に向かって下降します。ところが冬の落雷では、最初の放電が地表から始まって、雲に向かって上昇するものがあります。こういう落雷の割合が多いことが二番目の特徴です。このタイプの落雷は上に向かって枝分かれする特徴をもっています。

 三番目の特徴として、ときどきものすごくエネルギーの大きい落雷がおきることがあります。日本海沿岸の化学工場に落ちて大被害をおこした例、送電線に落ちて大規模の停電をおこした例などがあります。





◇人体への影響について


・どんな実験をしたのか?

 模擬人体をつくって、雷放電と同じ瞬間的な高電圧を発生する装置を使って、放電実験を行いました。模擬人体を二つ対称に置き、一方には金属を付け、一方には付けないで放電実験を行いました。それからどんな傷害がでるか、死因はなんであるかということを調べるため、動物に同様な高電圧を加える実験を行いました。

・ 模擬人体への実験

 高電圧を加えたとき、放電がとぶか否かは、金属の有無にはよらないことが分かりました。また、人体表面に沿って火花放電がおこることが分かりました。こういう面に沿っておこる放電を沿面放電といいます。模擬人体に金属ジッパーを置いて実験をすると、金属ジッパーのところでは沿面放電が非常に激しくなっていました。金属ジッパーのところは空気の絶縁が破れやすくなっているからです。

 雷にうたれた人には雷紋という模様ができるのです。ウサギの背中の毛を刈って、人間の皮膚に近い状態にし、放射状に広がる沿面放電をおこすと、電紋が発生します。電紋は沿面放電によって人間の皮膚にできる軽い熱傷であることが分かりました。

・ 人体への落雷の11の特徴はお手元の資料に書かれていますのでご覧下さい




◇雷から身を守るには

 最後に安全の問題について述べます。人が落雷にうたれない安全空間というのは、丈夫な導体に囲まれた空間です。

 人体は導体で空気という絶縁体でかこまれています。落雷はそれを突き破ってくるのですから、雷電流を安全に大地に流してくれるしっかりした導体に囲まれているところが安全です。実際には電車、自動車、鉄筋コンクリート建築等の内部です。木造建築でもしっかりした建築でしたら、内部は普通安全です。

 もう一つは避雷針や送電線、配電線の保護範囲に入ることですが、これには注意が必要です。

 避雷針の保護範囲というのは、余り当てになりません。雷によってこの保護範囲は変わるからです。強い雷は遠くから避雷針に吸い込まれるので、保護範囲は広くなります。弱い雷ですとひょろひょろっと避雷針の足元に落ちてくることがあります。保護範囲というのはこのように雷によって変わりますが、通常、避雷針の足もとから避雷針の高さを半径とする円内は安全になります。避雷針の高さが30メートル以上になると安全な円の半径は30メートルどまりとなって、高さには比例しなくなります。どの場合でも保護範囲の安全確率は100%ではありませんから、出来るだけ安全空間に入ることです。

送電線や配電線がありますと、その真下から両側へ電線の高さと同じ幅のベルト地帯は保護範囲になりますから、こういうところを通って安全空間に避難することです。

雷は雷雲の真下に落ちるとは限らず、雷鳴がかすかにきこえる遠方にも落ちますから、雷鳴が聞こえたら直ちに安全空間に避難することです。

 時間になりましたのでこれで終わりますが、雷に関する参考文献には、
日本大気電気学会編集 『雷から身を守るには---安全対策Q&A---』、
北川信一郎著 『雷と雷雲の科学』がありますので活用して下さい。