「雷、あるいは生命の火花」
    〜フランケンシュタインの怪物造成〜

       慶応大学理工学部助教授 萩原眞一


◆話の趣旨


 18世紀のヨーロッパにおいて、雷あるいは電気が生命の根源として捉えられていたことについて、『フランケンシュタイン』という文学作品を題材に、当時の科学的な理論の紹介を交えながら、解説しました。


◆目次


・『フランケンシュタイン』の紹介
ガルヴァーニ電気
・最後に 〜動力源としての雷〜



◆議事録



・講座の内容を要約したものを以下に載せてあります。










◆講座要約

◇「フランケンシュタイン」の紹介

・フランケンシュタインとは? 

フランケンシュタインといえば、傷跡のある角ばった顔をして、首にボルトが刺さっていて、のしのしとぎこちない感じで歩く。しかも、話し方がもごもごとしていて言語不明瞭。こんなイメージではないでしょうか? この怪物がフランケンシュタインなのではありません。
 実は、この怪物の創造者がフランケンシュタインなのです。

・作者:メアリー・シェリーについて

作者はメアリー・シェリーという女性です。弱冠19歳でこの作品を書きました。父は哲学者、母は女性解放運動家、夫はロマン派詩人という当時の第一級の思想家、文学者に囲まれて生きたのです。・あらすじ 物語ではフランケンシュタイン博士が怪物を創造します。しかし、創造直後、子供である怪物を醜いという理由で見捨ててしまいます。彼は、父親としての責任を放棄したのです。放棄された怪物は復讐心を抱き、父親であるフランケンシュタイン博士とその近親者を殺害しようと企てます。この創造者と被創造物との追いつ追われつの追跡・逃走劇が『フランケンシュタイン』なのです。

・フランケンシュタインの怪物造成法 

フランケンシュタインの怪物造成法には2つの原理が利用されます。1つは解剖学、もう1つはガルヴァ-ニの電気理論です。 具体的には、墓場や解剖室や納骨堂から死体の断片を集め、それらを繋ぎ合わせた後、そのコラージュ的身体に電気を注入して生命を付与しようとしたのです。。



◇ガルヴァーニ電気


・ガルヴァーニとは?


 18世紀後半、ボローニャ大学教授ガルヴァーニは、蛙の解剖中、遠くで稲妻が走った瞬間にメスの先端を蛙の大腿部にあてたところ、死んでいるはずの蛙の脚が痙攣することに気づきました。 ガルヴァーニは、実験を繰り返した後、雷が電気の一種であり、雷=電気の刺激で蛙の脚が痙攣するのではないかと想定しました。 「動物電気」という不可視な流体が蛙の神経を導管として充満し、外部から雷や起電機の電気の刺激があると、その「動物電気」が反応して筋肉が収縮するのではなかろうかと考えたのです。 そして、雷=電気こそ生命の根源であるという、当時としては画期的な説を唱えたのです。この説に鼓舞されて、死体に電気の刺激を加えることで死体を蘇生させることができるのではないかと考える人が出てきたとしても、不思議ではありません。


・フランクリン 


 ガルヴァーニだけではなく、18世紀には多くの人達が雷に取りつかれていました。フランクリンもその1人です。 彼は、雷鳴轟く嵐の中で有名な凧揚げ実験を行い、大気中に発生する雷と、起電機で起される電気が同一であるということを証明しました。 メアリー・シェリーはフランクリンの実験を知っており、『フランケンシュタイン』の中で触れています。


◇最後に 〜動力源としての雷〜

  以上、メアリー・シェリーが、フランケンシュタイン博士による人工生命造成の場面を描く際、当時最先端のガルヴァーニの電気理論からインスピレーションを受けたことを解説しながら、18世紀から19世前半のヨーロッパにおいて雷=電気が生命の根源として考えられていたことをお話させていただきました。